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X線蛍光顕微鏡(XGT)を用いた土器の分析

青山 洋昭 (戦略的プロジェクトセンター)・山極 海嗣 (戦略的プロジェクトセンター)


研究のポイント!

 ・新規分析手法の開発
 ・文理融合研究
 ・試料を非破壊的に分析

 考古学において「土器」は過去の人間の活動や文化に関する情報を提供する重要な資料です。その土器を考古学的に研究する際には、近年では蛍光X線分析を含む化学的な分析手法が広く用いられています。しかし、これらの解析法では資料の破壊してしまう必要が生じます。さらに、破壊してしまうことで、土器が本来持っている粘土の状態が分析できない等の問題がありました。
 そこで本研究では、X線蛍光顕微鏡(XGT)を用いて分析を行いました。XGTはX線ビームを試料に照射し、X線が当たった場所から発生する蛍光X線を検出します。元素によって蛍光X線のスペクトルが異なるので、試料にどのような元素がどういう分布で存在しているかを明らかにできます。このXGTで土器を分析すると、土器を壊すことなく土器のどこにどの元素がどれくらいあるのかがわかります。実際の分析では、八重山諸島から発掘された13個の土器片について、元素マッピングと多点スペクトル測定の2つの測定方法を用いることで、土器表面の元素分布を可視化すると共に、同一サンプル上の多点における各元素成分のデータを取得しました。
 その結果、カルシウムを主成分とした粒子が粘土に添加されていて、その粒子の大きさと量が土器間で異なることが明らかになりました。また、多点スペクトル測定から、土器間で鉄やケイ素を含む土器の粘土成分の均一性に特徴があることもわかりました。さらに、これらのデータを多変量解析(PCA、NMDS)で解析すると、八重山諸島における土器製作技術の違いは年代的な要因によるものである事が示唆されました。XGTを用いた本手法は、土器製作の技術変化を研究する上での新しいアプローチとして有効であると言えます。XGTの利用を通して、考古学と化学的分析、統計解析など文系分野と理系分野の研究者が協力して行った研究であり、今後の進展も期待されます。


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